若き知将が目指す新たなバスケットのスタイル 〜 トヨタ自動車アルバルク東京:伊藤 拓摩HC

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新生、アルバルク。

9月5日(土)にNBL・トヨタ自動車アルバルク東京の本拠地である、トヨタ府中スポーツセンターにて開催された公開練習ゲーム。
ファンクラブ会員限定という形で開催された一戦には、多くのファンが詰めかけ、新体制となったチームに期待感を持ちながらコートサイドで見守るという光景となった。
NBDLの強豪でもある、豊田通商ファイティングイーグルス名古屋との一戦は、アルバルクの新しいスタイルのバスケットがコート上でいい形で展開された。
オフェンスもディフェンスもコート全てを使って進めていく、昨シーズンとは全く違うスタイルでペースを握っていく。
3P終了時にはダブルスコア以上のリードを広げ、終わってみれば102-56というスコアでアルバルクが勝利を収めたゲームであった。

ゲーム後に今シーズンから就任した、トヨタ自動車アルバルク東京の伊藤 拓摩HCに話を伺った。
長くACを務め、初めてのHCしてのキャリアを今シーズンスタートさせた彼。
伝統ある、勝たなくてはいけないチームを率いて、NBLラストシーズンでチャンピオンシップ奪還を目指す、若き知将の声を聞いてもらいたい。

新生!アルバルクの幕開け! 〜 トヨタ自動車アルバルク東京 vs 豊田通商ファイティングイーグルス名古屋

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-スコア的には快勝という結果での練習ゲームでしたが、振り返っていただけますか。

この時期は全く新しいことをやっているので、色々と試しているというか、システムに慣れるというのが大事なんで。
このゲームの前に大学生チームと2回ゲームをやって、今日だったので。
まだ全然チームとしての出来上がりは完成していないですね。
今日なんかも走っている分にはいいけど、ハーフコートになった時に点が止まっていた。
ただ身長が大きかったりとか個人の能力で決めれていたけども、チームとしての出来はまだ全然なんで。
やりたい事も選手が分かってきたというか、それは大きな一歩ではあるかなと。
まだ仕上がり的には、全然まだまだ。
どうしてもDREAM GAMESでの秋田のゲームがあるので、そこにみんな注目しがちなんですけど。
もちろん大事な試合なので、そこにとはあるんですが。
かと言って、そこに向けすぎてチーム作りを焦ったりとか小手先だけのセットオフェンスとかはしたくないので。
そういった部分では、もう少し時間が掛かるのではないかなと思いますね。

-昨シーズンと比べるとディフェンスでのプレッシャーのかけ方だったりとか、攻守ともにボールプッシュへの意識など凄く早いなと感じました。そこをスタイルにチームを作っていきたいですか。

そうですね、フルコートを使うというオフェンスでもディフェンスでも。
昨シーズンはどうしてもハーフコートで、オフェンスでもハーフコートで作るという。
ただただ早くしたいんじゃなくて、バックコートからの流れを持ってきてオフェンスに入りたいっていう感じなんで。
ただ今は少し力の差があると凄くスピーディに見えるんですが、ただただラン&ガンをしたいんじゃなくて。
ディフェンスでもそうなんですけど、バックコートから。
オフェンスでもバックコートからの流れをそのまま持ってくる。
ディフェンスではバックコートのプレッシャーをそのままフロントでも用いて、フルコート使うというのは昨シーズンと違うんで。
そこはスピーディに見えるかもしれないですね。
でも、今日は凄く実際早かったです。

-今、松井選手と田中選手が代表に行っている中でチームに戻ってこれない中でチーム作りという意味では大変なのかなと。さらに彼らが帰って来たら、良い意味での悩みも増えるのかなと。

大変です(笑)
そうですね、自分が考えたものは、あの2人に合っているオフェンスなので。
あの2人は賢いし、アジャストは早いんと思うんですね。
でも、もう2ヶ月いなくてまだ2回しかチームと練習していなくて、この後沖縄で練習1回とゲームをして。
その前にジョーンズカップに出ていて、疲労とかも考えると無理もさせられない。
それでも今シーズン、ビデオコーディネーターが入って、練習とかやっている事を毎日まとめて、彼らに共有しているので。
何が起こっているのかというのは頭の中では分かっていると思う。
それが違うと思うんですよね。
頭の中でやろうとしているバスケットだったりとかディフェンスのシステムだとか分かっているので、そこは非常に助かっています。
昨シーズンとか代表で時間取られても、やっている事は一緒だった。
だけど、今シーズンは全く違うので。
最終的にはシーズン通してのチーム作りなので、強いチームはしょうがないですよね。
どこのチームも状況は同じだから。

-ACを長くやってきて、今シーズン初めてのHCになりますが、プレッシャーとか感じますか。

もちろん、プレッシャーはあります。
やっぱり去年も強いチームだったし、トヨタは勝たなくてはいけないチームなので。
そういったプレッシャーはありますけれども。
けど、何というのかプレッシャーを感じながらもチャレンジして楽しみながら、HC1年目なので。
完璧なコーチングというのは出来ないと思う。
それはシーズン通して、チームとして伸びないと。
タイムアウトの取り方なのか、ベンチメンバーの使い方なのか、戦略・戦術の部分なのか、そういう部分などゲームの中でのアジャストとかもやりながらですよね、本当に。
選手にも言っているんですよ、俺経験ないって(笑)
それはしょうがないので。
ただ約束してるのは、毎試合毎試合勉強して伸び続けるって言っている。
勝ついうのも重要なんですけど、より自分自身が成長するというように仕向けた方がプレッシャーも少なくいけると思っています。
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-ゲーム中、プレーの丁寧さや雑にならないようになどの指示を多く言っていましたが、その部分は非常に重要にしている感じですか。

いや、その時だけだと思うんですよね。
点差が開いたりとかで集中がちょっと切れたりとかですよね。
点差が開いて選手自身が自分のプレーを見せたいとか、自分が良いプレーしたからもう一つプレーしてやろうとかマインドがシフトするんですよね。
そういう時に丁寧にとか、今しっかりとか、堅実にとかを言う事で集中力を戻してあげている感じですね。
今は全然ターンオーバーとかも許しているものと許していないものがあって。
そういった意味では丁寧にとかよりも、よりダイナミックにアグレッシブにやって失敗したならしょうがないと。
いつも選手に言っているのは、同じミスとかを12月とかにしたらダメだけど、今は許すミスだ(笑)と。

-自身のコーチングスタイルはどんな感じで考えていますか?常に今日は動き回っている感じでしたが。

そうでしたか?
あぁ、まだ分からないです。
今日はまだ試合じゃなくて、選手に教えている段階なので。
全然試合と思っていなくて練習だと思っているので、教えなくてはいけない事は教える。
選手に言っているのは、シーズン中に後半になったら、ベンチにどっしり構えて、拍手をしたりする感じにすると(笑)
理想はね、理想は。
でも、その時その時に合ったチームに必要な事をしなくてはいけないと思っているし、今の段階では全く分からないです。
自分のスタイルとかは。
ただ、現状の段階としてはスタイルを浸透させるとか教えるという事が大切なので、今日はあぁなったと思います。
これが勝ちに拘って勝ちに行ったという時になったら違うかもしれないですけど。
今日の段階では勝ちというより、スタイルを貫くという事に集中したので。
自分でも見つけていなかなくてはいけないかな。

-新加入した#0リチャード・ソロモンは初めて見ましたが、7フッターなのにオールラウンダーな働きをしたり、器用な部分があったり、チームの大きな柱になりそうですが。

若いんですよね。
その若くてエネルギッシュなプレーを出してくれるのを凄く期待していて。
彼はFIBAルール初めてなんですよ、NCAAからNBAなので。
とりあえず、慣れろと、笛に慣れろと。そして、日本のバスケットに慣れろと。
そういう事を言っていますね。
そんなにプレッシャーも与えていなくて、もちろん期待はしているし、それなりに活躍できると思っているから獲得したというのはあるんですけど。
そういう意味で彼も自分と同じですね、とにかく慣れろと。
やっぱり彼以外のメンバーはずっと一緒、だから息も合っているんですよね。
そういう意味では一緒なんですよね、彼にも合ってくるというのが大事なんで。
彼にはとりあえずは無理矢理なフォースプレーっていうよりは、ゲームにナチュラルに入って行って、そこでチームとの息も合ってくるというのを周知させていますね。

-チームスローガンである、ONENESSに掛ける思いとは。

選手にも言っているんですけど、当たり前のようにチームが一つにならないといけない。
今年やろうとしているディフェンス・オフェンスのスタイルは、実はストラクチャーを与えるんですけど、決まり事は少ないんですよね。
例えばセットだったら、スクリーンしたらこう動くとかいろいろあるけど、それが無いんですよ。
こうしたら、この後の選択肢がこれだけあるよというスタイルでやっているんです。
そうなっていくとセットオフェンスは、選手に言っているのは「インスタント・サクセスフル」
インスタントなんで、その場で出てくると思うんですよね。
セットオフェンスをガチガチに決めていくと、スカウティングされてしまうと、その場で終わってしまう。
それよりもシーズンを通して、選手がそのストラクチャーを作って伸び伸びとできるというようなというイメージを考えている。
となっていくと、選手同士の息が合っていないといけないんですよね。
ディフェンスでもそうなんですけど、今日はトラップを掛けていましたが、あれも息なんですよ。
ここで行くというのは決めていないんですよ。
息が合った時に行けという指示を出している、それは練習してトレーニングしているのはあるんですけど。
なので、一つにならないと成功しないというのもあるんですよね。
そこから”ONENESS”、一つにならないといけないという言葉ですよね。
もちろんそれ以外にも当たり前ですけど、一丸とならないと戦えないしという意味も込めた言葉なんですけどね。
でも、まだまだ一つになっていないなと。
まぁ、今は当たり前ですが。
それがシーズンに行って、試合を重ねていくにつれて、一つになれればいいかなと思います。

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きっと毎日試行錯誤しながら、自分自身のコーチングレベルを上げ、その中で勝たないといけないチームを率いる。
苦しいこともあったり、辛いこともあったりするだろうが、話をしている彼の表情は非常に明るく、目は真っ直ぐに前を向いている感じだった。
今シーズンのアルバルク、非常に面白いチームになりそうだし、強いということは言えるだろう。

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